大規模成長投資補助金(「中堅・中小企業の省力化等の大規模成長投資補助金」)は、地域の雇用を支える中堅・中小企業が、足元の人手不足等の課題に対応し、成長していくことを目指して行う大規模投資を支援する補助金です。
本補助金は、最大50億円の補助金を受給でき、大規模な成長投資を後押ししてくれる制度です。
当社は創業以来650社以上の全国の事業者様の補助金申請を支援してまいりました。
これまで蓄積してきたノウハウをもとに、本記事では「貴社が今、大規模成長投資補助金を申請すべきかの検討方法」や「これから準備していくべきこと」についてもお話しいたします。
この記事から「大規模成長投資補助金」の制度概要の理解はもちろん、自社の投資内容が本補助金の要件を満たしているのか、自社は申請できるかをスムーズに判断できるようになります。
※こちらの記事は、2024年6月26日公表の公募要領、2024年12月3日公表の交付規定、よくある質問一覧に基づいています。情報は改定される場合がございます。
目次
大規模成長投資補助金の「目的」
大規模成長投資補助金とは、地域の雇用を支える中堅・中小企業が、足元の人手不足等の課題に対応し、成長していくことを目指して行う大規模な投資を支援する補助金です。
補助金を活用する上で、まずは各補助金の趣旨、目的を理解することが重要です。
地域の雇用を支える中堅・中小企業が、人手不足等の喫緊の課題に対する生産性の向上や
事業拡大に取り組み成長していくことを目指して行う大規模投資を促進することで、
地方における持続的な賃上げを実現することを目的としています。
大規模成長投資補助金の「事業規模」
大規模成長投資補助金は、すべての企業が申請する要件を満たしているわけではありません。
補助事業の対象者は、交付申請時に要件に当てはまる事業者のみが申請することができます。
大規模成長投資補助金の補助対象となるための要件として、まずは「事業規模」を確認します。
補助事業の対象者
上場・非上場、資本金に関係なく、
公募申請時点で、常時使用する従業員の数が2,000人以下の会社または個人が補助事業の対象者です。
この常時する使用する従業員は下の表の通りです。
公募申請時点で2,000人以下であれば補助対象者の要件を満たすため、公募申請後に2,000人を超えても要件を満たしています。
常時使用する従業員数に | |
〇含まれる | ×含まれない |
正社員パート、アルバイト社員 雇用形態が正社員である場合の 実習生、特定技能実習生 | 派遣社員 契約社員 日々雇い入れられる者 2か月以内の期間を定めて雇用される者 季節的業務に4か月以内の期間を定めて雇用される者 |
みなし大企業について
交付申請時点で、下記のいずれかを満たすみなし大企業に該当する場合、補助対象者になれません。
- 発行済み株式総数又は出資金額の2分の1以上が同一の大企業(外国法人含む)の所有に属している法人
- 発行済み株式総数又は出資金額の3分の2以上が複数の大企業(外国法人含む)の所有に属している法人
- 大企業(外国法人含む)の役員又は職員を兼ねているものが役員総数の2分の1以上を占めている法人
- 発行済み株式総数又は出資金額の総額が上記に該当する法人の所有に属する法人
- 上記に該当する法人の役員又は職員を兼ねている者が役員総数のすべてを占めている法人
親会社について
親会社(議決権の50%越えを有する)が大企業である場合、子会社は「みなし大企業」とされ、本補助金に申請できません。
親会社がいても親会社が従業員2,000人以下の中堅企業や中小企業等である場合は、子会社は申請することができます。
親会社と全ての子会社は同一法人とみなされ、いずれか1社のみでの申請しか認められません。
ただし、共同申請形式(親会社と子会社が共同で1者、1件の申請を行う)にて申請することは可能です。
大規模成長投資補助金の「応募要件」
2章の対象となる事業者の「事業規模」を満たした上で、大規模成長投資補助金の応募要件には下記①②の2つがあり、両方を満たすことが必要です。
①設備投資下限額:投資額10億円以上(税抜)、設備投資の単価は100万円以上
補助対象となる経費の合計額が最低でも10億円(税抜)以上の投資を行う場合、①の要件を満たします。
ただし、この10億円(税抜)には専門家経費、外注費は含まれません。
その他の経費項目の合計によって達成する必要があります。
また、投資後に投資総額が10億円以下(税抜)の場合は補助要件を満たさないため、補助対象外となります。
なお、各設備投資の単価は最低でも100万円以上である必要があります。
②賃上げ要件を達成すること
補助事業の終了後3年間の補助事業に係る従業員及び役員の
1人当たりの給与支給総額の年平均上昇率が、補助事業実施場所の都道府県における
直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上であること。
申請時に基準率以上の目標を掲げ、その目標を従業員等に表明の上、達成すること。
つまり、「補助事業実施場所が所在する都道府県の5年間の年平均成長率よりも、高い賃上げを達成すること」が求められています。
ちなみに、全国平均の年平均成長率は3.0%でした。しかし、2024年に採択された企業の多くは5.0%近くの賃上げを表明していることから、高い賃上げ率が評価される傾向にあると考えられます。
これら採択された企業の数値も目安に入れつつ、賃上げ計画を表明、達成する必要があります。
賃上げの対象となる従業員
賃上げの対象となる従業員は以下の通りです。
賃上げの対象に | |
〇含まれる | ×含まれない |
従業員 役員 事業者から直接給与を支払われている場合の 技能実習生 | 派遣社員 臨時・短期の技能実習生 |
給与支給総額の計算方法
給与支給総額の算定に含まれる項目において、賃上げ要件を達成する必要があります
給与支給総額に | |
〇含まれる | ×含まれない |
給料 役員報酬 賞与 各種手当(残業手当、休日出勤手当、職務手当、地域手当、家族(扶養)手当、住宅手当) | 福利厚生費 賞与引当金通勤費 |
賃上げ要件の計算方法について
補助事業1人当たり給与支給総額の算定にあたり含める補助事業に関わる従業員は、
基準年度及びその算定対象となる各事業年度において全月分(12か月)の給与等の支給を受けた従業員とします。
そのため、中途入社した従業員の給与総支給額は入社の翌事業年度以降から、
給与支給総額と、人数に含めて計算します。
一方で、退職者は退職する前に全月分(12か月)の給与支給を受けた事業年度まで計算に含めます。
大規模成長投資補助金の「補助率」「補助上限額」「補助対象経費」
大規模成長投資補助金を活用する場合、設備投資に対してどの程度の補助金を受給できるのでしょうか。
補助金額は補助率をもとに計算することができます。
しかし、補助上限額が設定されているので注意が必要です。
大規模成長投資補助金の「補助率」は1/3
大規模成長投資補助金において、投資金額に対する補助率は1/3です。
例えば、総額12億円(税抜)を投資し、全額が補助対象であると認められた場合の補助金額は4億円です。
大規模成長投資補助金の「補助上限額」は50億円
一方で、補助金額には50億円までという上限があります。
例えば、総額210億円(税抜)を投資し、全額が補助対象であると認められた場合の補助金額は
補助率でいうと、70億円です。しかし、上限額が設定されているため補助金額は50億円です。
大規模成長投資補助金の「補助対象経費」は建物、機械装置等
大規模成長投資補助金の補助対象となる経費は以下の通りです。
採択される前に着手している事業でも補助対象になり得ますが、交付決定より前に契約(発注含む)を行った経費については、補助対象外となります。
そのため、採択前を含め、交付決定前までに契約(発注含む)、手付金を支払っている経費については、補助対象外となりますのでご注意ください。
〇補助対象経費に含まれる |
建物費 機械装置費 ソフトウェア費 外注費 専門家経費 又はこれら経費の組み合わせ |
このうち、補助対象経費に含まれるものであっても補助対象外になる場合もあります。
経費項目 | 補助対象経費に 〇含まれる | 補助対象経費に ×含まれない |
建物費 | 建物の建設、増築、改修、中古建物の取得に要する経費 | 構築物(門扉、フェンス、コンテナ置き場や車両待機場の場内のアスファルト舗装費用、場内雨水排水施設) 本社、研究棟、インキュベーション施設、福利厚生施設など 事業規模拡大による成長と賃上げに貢献しない投資費用 |
機械装置費 | 専ら補助事業に使用される、 機械装置、工具・器具の購入、製作、借用に要する経費 | パチンコ、スロット、ゲーム機 自動車等車両(普通自動車、トラックなど公道を自走する物)の購入費、修理費、車検費用 |
外注費 | 具体的な補助事業の実施の大半を他社に外注又は委託し、企画だけを行う事業 |
補助対象経費の判断は難しいですが、
基本的には事業規模拡大による成長と賃上げに貢献する投資内容であることが求められます。
この観点から検証してみましょう。例えば、このような投資内容でも補助対象経費に該当します。
〇補助対象経費に含まれる例 |
|
大規模成長投資補助金の「スケジュール」
大規模成長投資補助金を検討するなら、全体の流れを把握しておきましょう。
その上で、自社であれば、いつまでに、何が必要か、逆算して申請準備を行う計画性を持つことが重要です。
スケジュール予想から段取りを考えて、申請に備えましょう。
ここでは次回公募の予想と、諸手続きについて全体の流れをご紹介します。
次回公募の予定
令和7年度に開催されるであろう新たな公募についてはまだ情報が公開されていません。
しかし、経済産業省では令和7年度の補正予算案が議論されています。
その議題の中には、大規模成長投資補助金も含まれており、公募自体はある見込みです。
次回公募のスケジュールの予想
公募開始 令和7年3月上旬頃
公募締切 令和7年4月下旬頃
採択発表 令和7年6月頃
発注時期 令和7年8月頃
納入締切 令和9年12月頃
補助金入金 令和9年12月頃
※こちらはあくまで予想であり、公募回の開始や時期を保証するものではございません。
補助金の申請から採択までの流れ
実際に大規模成長投資補助金を申請する場合は、以下の手順に沿って手続きを行います。
スケジュール | 概要 | 次回(予想) | |
公募開始 | 事業計画書など申請資料の用意 | R7.3頃 | |
公募 | 申請 | 事業計画書など申請書類の提出 | R7.4頃 |
審査 | 書面 審査 | 形式要件の適格性の確認及び計画の効果・実現可能性等について定量面の書面審査 | R7.5頃 |
プレゼンテーション審査 | 外部有識者(利害関係者を除く)による計画の効果・実現可能性等、定性面も含めたプレゼンテーション審査 ※ 地域ブロック単位で審査会を開催 | ー | |
採択発表 | 本公募申請者に対する審査結果の 決定・通知 | R7.6頃 | |
事業 の 実施 | 交付 申請 | 見積書や相見積書等の提出を行い、採択された企業が補助金を受けるための手続き。 | ー |
交付 決定 | 交付申請者に対する事務局による 交付の決定・通知 ※1 | ー | |
事業状況確認 | 補助事業期間における補助事業者の 事業実施状況の確認 | ー | |
補助額の確定 | 事業完了後、補助事業者による事業報告・書類類提出をもとに検査を行い、補助額を確定 | ー | |
補助金の交付 | 補助金交付(支払い)手続きの実施 | R9.12頃 | |
事業化及び賃金引上げ状況等の報告 | 補助事業者の補助事業期間終了後の事業化、賃上げ状況等の報告(3事業年度分(計4回)、毎年度実施) | ー |
※1採択を受けただけでは、補助金を受ける資格を得ただけであり、申請した設備が補助対象として認められるのかという審査が行われる。
大規模成長投資補助金の「公募前から取り組むべきこと」
本補助金の特徴は、投資規模が10億以上と大規模な投資計画を前提としているにもかかわらず、
公募開始から締切までの期間が約2カ月弱と非常にタイトなことです。
一方で、第一次公募の最終採択率は15%、第二次公募の最終採択率14%でした。
非常に厳しい関門であり、これを突破するには相当な準備と戦略が必要です。実際に大規模成長投資補助金の申請受付が開始されてから取り組んでいては絶対に間に合いません。
補助金申請に向けて、今すぐ事前準備を始めることが重要です。以下についてこれから取り組んでいきましょう。
補助金申請の意思確認
そもそも経営戦略・投資計画があるか
補助金を活用する上で一番重要なことは、成し遂げたい経営戦略や成長投資計画があり、その上で補助金を活用するということです。
補助金の有無に関係なく実現したい戦略が前提にあることが重要です。
決して補助金を使うこと自体が目的とならないよう注意してください。
なぜなら、補助金ありきで投資計画を策定すると、事業を拡大させるために本当に必要な投資であるかを見誤ってしまう恐れがあるからです。
「せっかく設備投資をしたが買い手がなく、ほとんど稼働していない」、「投資資金を回収できそうにない」といった本末転倒な結果を招きかねません。
また、大規模成長投資補助金では目的として、企業に事業拡大や生産性向上による地域経済の牽引、持続的な賃上げなどを求めています。
これらの趣旨に合わない経営戦略、投資計画は審査上の評価が低くなります。
企業としてこれらの成長を望み、全社として取り組む戦略があることが前提です。
事業機会に対し、投資のタイミングが最適か
補助金を利用すると、投資のタイミングを補助金のスケジュールに合わせなければなりません。
大規模成長投資補助金の公募回はいつ開始されるか、誰にもわかりません。
また、実際に申請してから採択までの審査期間と採択後の手続きにかかる期間も長いです。
よって、当初の投資計画と比べて、投資時期は長期化する場合があります。
それによって、事業機会を逃す可能性がないか市場や競合他社の分析等検証をしてみましょう。
また、大規模成長投資補助金の採択は、現状1社につき一度きりです。
それでもなお、今、この投資内容で、大規模成長投資補助金に挑戦すべきなのか、社内でしっかりと話し合っておく必要があります。
経営戦略・投資計画の具体化
投資内容について、詳細を決める
購入する機械装置、ソフトウェア等について、細かな仕様やオプションまで決定します。
また、実際に場内に設置した場合の配置図を作っておきます。
建物なら、地盤調査、配筋検査等の事前検査、設計・デザイン、機械装置等の設置レイアウトまで事細かく計画を立てます。
その際は、業者に見積を請求するなど、取引業者も巻き込んで投資計画を具体化させていきましょう。
また、採択後は、本見積書のほか相見積書を取得し提出する必要があります。相見積を依頼できるよう多数の業者と面識を作っておくことをおすすめします。
※事前の契約や発注を行った場合、補助対象経費とすることができません。ご注意ください。
補助対象経費に含める経費を選択する
投資総額が10億円以上を超えればよいからと、何でも補助経費に詰め込んでしまうのは得策とは言えません。
大規模成長投資補助金では目的として、企業に事業拡大や生産性向上による地位経済の牽引、持続的な賃上げなどを求めています。
これらの趣旨や先述の審査基準に合わない投資計画は審査上の評価が低くなります。
そのため、一部の投資をあえて補助対象にせず、完全自己負担とすることも戦略のうちです。
審査基準を踏まえ、自社の経営戦略を深掘りする
大規模成長投資補助金では、以下の5つの観点から審査が行われます。
これらの審査基準を踏まえて、自社の経営戦略をさらに洗練させていきましょう。
審査項目 | 内容 |
経営力 | 経営戦略上の補助事業の位置付けを踏まえ、補助事業を通じて企業自身の持続的な成長につながることが見込まれるか |
先進性・成長性 | 補助事業により、労働生産性の抜本的な向上が図られ、当該事業における人手不足の状況が改善される取組か |
地域への波及効果 | 補助事業により、従業員1人当たり給与支給総額、雇用の増加等、地域への波及効果が見込まれる取組か |
大規模投資・費用対効果 | 補助金額に対して、既存事業とのシナジー効果等により生み出される付加価値額や売上高・賃金の増加分が相対的に大きな取組か |
実現可能性 | 政策目的に合致した取組であり、かつ、補助事業に必要な資金・体制等が十分に確保されているか |
事業面では、実際に補助事業を開始する前後での組織面、生産面での変化(費用対効果)について、
根拠をもって主張することが重要です。
たとえば、新たな工場設立による人員配置の変更や生産性の変化具合など、
配置図や経営指標などの文字あるいは数字で表現できるよう事前に計算しておきましょう。
組織体制面では、既存事業および補助事業をどのように並行しながら事業活動をしていくか、
事業運営体制や販売体制の記載が求められます。
資金調達計画の検討
設備投資にかかる費用を金融機関からの借入など外部から調達する場合は
調達先の選定及び調達先から事前の理解まで得ておく必要があります。
大規模成長投資補助金では、補助対象経費について、一度経費の全額を事業者が負担する必要があります。
契約・発注から支払いまですべての手続きが完了し、補助金事務局へ報告書などを提出し承認が得てから、
やっと補助金が振り込まれます。
採択後から補助金の入金までは数年近くかかると想定しておきましょう。
資金調達が必要な場合は事前に金融機関等融資先と投資計画を共有、融資内容を相談しておきましょう。
補助金申請時に慌てなくて済みます。
事業計画書など申請サポート支援の検討
ここまで記事を読んでいただいてもなお、不安の残る方はできるだけ早く専門家に相談しましょう。
数億円を超える大型補助金を獲得するには、経験豊富な専門家の支援を得ることが効果的です。
さいごに
当社はこれまで650件以上の事業者様を採択に導き、補助金申請支援において全国2位の実績がございます。
大規模成長投資補助金に限らず、貴社に最適な補助金制度のご提案から申請方法、
投資計画の立て方のご相談まで幅広く専門家が対応させていただきます。
いつでも無料相談を受け付けていますので、
設備投資や補助金申請でお悩みのことがございましたら、お気軽にお問い合わせくださいませ。
「説明を読んだが分からないことがある」、
「自社の場合は大規模成長投資補助金の応募要件や事業規模を満たしているのか」、
「自社が今考えている投資内容は大規模成長投資補助金の審査点と合致するものなのか」、
など、どんな些細なご質問でも喜んで承ります。
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