銀行から融資を受けるとき、「どの銀行から融資を受けるのが良いのか?」、「銀行を選ぶ時、何を基準に判断したらいいのかわからない。」など悩んでいませんか?銀行選びのポイントを理解することで、数ある銀行の中から、自社にとって最適な銀行を選び、最適な融資を受けることができるようになります。
実際に私がアドバイスした企業では、同じ手段で銀行を選び、メインバンクを中心に良好な関係性を築き、希望する融資を実現しています。この事例では、代表者が何年も資金調達が上手く行かずに資金繰りで悩まれていたのが、今では資金繰り面の問題は解消し、販路の開拓や新商品の開発など事業成長のために日々、活動されています。この記事では、「中小企業におすすめする銀行はどこか?」、「メインバンクを選ぶ基準は何か?」について、具体的なポイントをお伝えします。
ポイントを理解していただければ、中小企業が銀行融資を受けるとき、メインバンクを選ぶときに迷うことはありません。自社にとって最適な銀行と取引し、資金面での悩みを解消することで、事業の成長を実現できるようになります。
中小企業の融資は信金・信組、日本政策金融公庫が良い
中小企業が銀行から融資を受ける際、「どこに相談したらいいのか?」、「銀行、信用金庫、信用組合、日本政策金融公庫など色々あり、どう選べばいいのかわからない。」、「融資を受けたが返済できるか不安である。」などわからないこと、不安なことがあるものです。事業を発展させるためにも自社にあった銀行の選択基準、返済の考え方などもお伝えします。
まずは信用金庫や信用組合へ相談する
借入をする会社の事業規模に大小があるように銀行の規模にも大小があり、身の丈に合った銀行との取引が大切です。特に初めての融資相談は、近くにある信用金庫や信用組合への相談をお勧めします。
これは、1000万円の融資を受ける時、メガバンクや大手地方銀行からすると「1000万円の融資先」は重要な顧客ではありません。一方で、信用金庫や信用組合など小規模な金融機関にとっては、大切な融資先となります。金融機関にとって重要な顧客となることで、資金調達に関するアドバイスや新たな融資制度などの情報提供、販路開拓などの経営支援などを受けやすくなるメリットがあります。
「〇〇銀行」とは異なり、知名度は劣るかもしれませんが、地域に根差した経営をする金融機関であり、小規模な会社や創業間もない会社に対しても親身に気軽に相談できる金融機関です。「メガバンクから融資を受けた!」と言うと世間体はいいかもしれませんが、銀行にとって重要な顧客ではないため、決して良い判断とは言えません。
日本政策金融公庫とも取引する
中小企業が融資を受ける際、日本政策金融公庫にも並行して相談に行くべきです。日本政策金融公庫は、民間の銀行と比べると低金利な制度や担保や連帯保証人が不要な制度などのメリットがあります。また、公的な金融機関の代表例でもあり、創業時や業歴が浅い時、事業が拡大している時など自社の成長ステージに応じた融資制度が整っています。そのため、信用金庫や信用組合への相談と同時に融資相談することが重要です。
協調融資でより良い融資を実現する
融資を受ける際、複数の金融機関から協調して融資を受けることで、希望する金額や条件を実現することができます。特に1つの金融機関のみではリスクが高く、希望する満額を借りることができない場合に複数の金融機関の協調融資によって、実現できる可能性が高まり、希望する融資金額を実現するために有効な手段です。
協調融資にもさまざまなパターンがあり、例えば、「民間の銀行などと日本政策金融公庫の連携で融資を受ける」、「複数の民間銀行などの連携で融資を受ける」、「民間の銀行などの無担保融資と信用保証協会の保証付き融資を受ける」など複数の銀行などが連携することで資金調達をスムーズに行います。
特に日本政策金融公庫は民間金融機関との連携強化に取り組んでおり、資金調達方法の多様性や安定性、確実性を高めることができます。
メインバンクを選ぶポイント
メインバンクは、金利が安いという理由だけでコロコロ変えてはいけません。なぜなら、安定して事業を発展させるためには、必要な時に必要な金額の融資が受けられ、経営が苦しい時にも支援してくれるメインバンクが必要だからです。
このメインバンクを選ぶポイントは大きく分けて3つあります。1つ目は「返済期間や返済方法と金利のバランスを重視すること」、2つ目は「事業内容や経営者のビジョンに共感を得られること」、3つ目は「銀行の融資に対するスタンスを確認すること」です。
3つのポイントを押さえ、事業規模や財務内容、借入金額などの自社の状況にあった銀行を選ぶことは、円滑な資金調達と事業発展を加速させるうえで重要となります。
金利や返済期間などの融資条件から判断する
銀行融資を受けるために相談し、具体的な手続きを進めていく段階になると銀行などの担当者から融資条件(融資金額や金利、返済方法、担保・保証人など)の提案・提示があります。この時、複数の銀行などに相談し、条件の提案・提示があると「金利が低いこと」を判断軸にする経営者は多く、金利で判断して失敗した経営者を見てきています。失敗しないためのポイントを解説します。
金利メリットだけを提案する銀行には疑いを持つべき
銀行が戦略的に低金利で提案すること自体を問題視する必要はないのですが、金利メリットを全面に押し出した提案には気を付けなければなりません。
あなたが融資を受ける時の銀行に対するニーズは何でしょうか?安く借りれたらそれで満足でしょうか?本当にお客様の経営を考えている銀行は金利メリットだけを強く提案するでしょうか?本当に融資で困った時に親身に寄り添ってくれるのかで判断しましょう。
返済金額や金利など総合的に判断する
融資条件を総合的に判断するためには、経営者の中で融資条件の基準を設けるべきです。具体的には、「融資期間が3年以内、金利が3%を超えている」などは良い条件とは言えません。「融資期間5年以上、金利1~2%台」を意識しながら、銀行の提案を確認しましょう。
「借りたお金を確実に返せるのかどうか」を判断するために、金利が低いだけではなく、毎月の返済金額と金利を合わせてトータルでいくらになるのかを検証し、今後の事業見通しや返済が可能な金額など踏まえ、総合的に判断しましょう。
事業内容やビジョンに共感をしてくれるか
メインバンクを選ぶとき、事業内容や経営者のビジョンに銀行が共感をしてくれることが重要です。これは中小企業にとって、銀行は重要なパートナーの1つであるからです。
また、事業内容やビジョンに共感を得られることで、過去の決算内容だけでなく、中長期での事業計画に対して融資を受けることができます。経営者が事業内容やビジョンを説明した際、それらに共感を得られているかどうかはメインバンク選びのポイントです。
銀行は成長する企業に融資したい
銀行は融資を通して企業の成長を支援しています。これは「お客様の成長が、銀行の成長に繋がる」と考えているからであり、お客様が成長し、「事業規模が大きくなる」、「新工場を建設する」、「同業者をM&Aする」などの新たに融資する機会が増え、結果として銀行自身も成長します。目先の利益を追及するのではなく、企業の成長を支援するスタンスの銀行との出会いは貴重なものです。
共感を得るために経営方針書や事業計画書などに明文化する
自社の事業内容を理解し、銀行担当者からの共感を得るためには、「経営者の経営に対する想い」や「事業を通じて実現したいこと」、「解決する社会的な課題」などの経営者のビジョンやそれを実現するための具体的な取組内容や売上・利益の計画が不可欠です。
経営者の頭の中にあることを話すのは得意であっても、しっかりと明文化し、説明しなければ想いは伝わりません。経営計画ではなく、経営計画”書”を事前準備しましょう。
決算書などの数字しか見ない銀行には要注意
銀行の融資審査において、決算内容の良し悪しは非常に重要であり、最重要ポイントと心得ておくべきです。そのため、決算書の細かい内容までを調査されることもあり、財布の中身を探られるようで気分の良いものではありません。不思議なことに融資先の事業内容や経営者のビジョンには、大して関心を示さずに決算情報で融資判断する銀行があります。各銀行の方針であり、良い悪いではないのですが、決算書などの数字しか見ない銀行との取引には注意が必要です。
銀行の融資に対するスタンスを確認する
銀行の融資スタンスはさまざまであり、「長期的な取引をする銀行と短期的に収益を上げようとする銀行」、「事業内容を重視する銀行と担保や保証を重視する銀行」など銀行ごとの特色があります。このスタンスの違いは、各銀行のビジネスモデルやどのように収益をあげるのかに違いがあるからです。ここでは、銀行の融資に対するスタンスを確認する3つのポイントをお伝えします。
長期的かつ繰り返しの支援が受けられるか
中小企業にとって、銀行融資は最も重要な資金調達手段であり、多くの経営者は同じ銀行と長い取引をされています。これは、経営を続けられる中での経験則として、銀行から長期的かつ繰り返しの支援を受けることが大切と心得ているからです。事業が成長している時、新たな設備へ投資する時、急激な不景気で手元の資金が不足した時など、融資が必要なタイミングは思っている以上に何度も発生します。
例えば、「当社が赤字になってしまった時、どのような借り方があるか?」など質問して、銀行のスタンスを確認しましょう。具体的な手段の提示があれば良い銀行と言えます。良い時も悪い時もスムーズな融資を受けるためにも長期的な視点で取引が可能かどうか判断しましょう。
次の融資手段についてアドバイスがあるか
銀行から融資を受ける時、次の融資手段として「どのような選択肢があるのか?」、「最も良い手段はどれか?」など中長期的な視点に立った融資手段のアドバイスがあるかどうかは、メインバンク選びにおいて重要です。銀行にとっての「目先の融資や業績」ではなく、本気で中小企業の経営や資金繰りを考えているかどうかの判断軸となります。
例えば、「半年後にも融資を受けたいけど可能かな?」や「売上が2倍くらい増える見込みだけど資金繰りは大丈夫かな?」などと質問し、次の融資手段についてのアドバイスの良し悪しを判断しましょう。理想を言えば経営者から質問しなくてもアドバイスがあることですが、無い場合でも質問に対して即答で良いアドバイスがあれば、良い銀行と判断して問題ありません。
保証や担保を前提とした提案か
中小企業が銀行から融資を受ける時、代表者の連帯保証や信用保証協会の保証を求められることが一般的であり、不動産などの担保を求められることがあります。保証や担保は、中小企業が融資を返済できなくなった時に備えるためであり、特に創業間もない頃や財務内容が良くない時は、必ず保証や担保が必要です。
しかし、銀行によっては、財務内容が良く、今後の見通しも良いにも関わらず保証や担保を外さないことがあります。中小企業にとっては、融資の選択肢が限定されるため、希望する金額を借りられない、保証協会の保証料分が割高になるなどのデメリットがあります。
例えば、「保証人を外すことはできますか?」や「保証協会を利用しない融資は可能ですか?」などと質問し、各銀行の対応を確認しましょう。無担保や保証協会なしでの融資が難しい場合、具体的な手段や可能となるタイミングの提案は無いでしょう。業歴や財務内容によって、今すぐに無担保・無保証人での融資が難しくても、どのような経営状態になったら可能となるのか、前向きな提案があれば、良い銀行と判断して問題ありません。
銀行融資の種類を理解して選択肢を増やす
銀行融資には、”プロパー融資”や”信用保証協会付き融資”など日常の生活では聞きなれない言葉が出てきます。中小企業の銀行融資にとって、担保が必要なのかどうか、公的な保証機関を利用するのかどうかは重要であり、それぞれを理解することで、融資の選択肢を増やすための解説を行います。
プロパー融資
プロパー融資とは、各銀行が独自に中小企業へ融資することであり、最も各銀行の特色が出やすい融資です。プロパー融資は、無担保のものから、不動産などの担保が必要なもの、連帯保証人が必要なものまで様々です。特に信用力が低い中小企業では、プロパー融資を受けることは難しく、その中でも無担保・無保証人で融資を受けられるのは、ごく一部の中小企業です。まずは、連帯保証人が必要であってもプロパー融資を受けられる会社を目指しましょう。
信用保証協会の保証付き融資
中小企業の銀行融資にとっても最も大切なことは信用保証協会からの支援を受けられるかどうかです。地方銀行や信用金庫、信用組合などどの銀行から融資を受けるとしても信用保証協会の保証を付けることを提示してきます。信用力が無い、財務内容が良くない、実績がまだ無い会社であっても融資を受けることが可能となる公的な保証機関である信用保証協会が最も重要であると言っても過言ではありません。
民間保証会社の保証付き融資
公的な保証機関である信用保証協会以外にも民間の保証会社も事業性融資を行っています。協調融資の1つとして、プロパー融資と民間保証会社の融資を合わせることで、スムーズな資金調達が可能となることもあり、第三の選択肢として、民間保証会社も検討しましょう。
返済計画は慎重な判断が必要
融資を受ける時、「毎月、この金額なら返済できそうだな」、「来年にはこれくらい売上が増える見込みだから大丈夫」と返済ができると判断しているものです。しかし、この判断が楽観的過ぎた、予測が甘すぎたがゆえに「返済で資金繰りが苦しい」、「返済のために追加で融資を受けている」という状態に陥るリスクがあります。考えている返済計画が妥当なのかどうかのポイントを解説します。
返済が可能かどうかの判断ポイント
よくある勘違いなのですが、融資は原則、売上金で返済するものではありません。では、返済するための原資とは何なのでしょうか?それは『利益』です。「あれ?そんな単純なことなの?」と思われるかもしれませんが、これを実行するのは非常に難しい問題なのです。ここでの利益とは、法人税などを支払った後の税引後の当期純利益のことです。
厳密には、減価償却費などの「非現金支出費用(※)」を加味しますが、まずは毎月の返済金額以上の利益を出せるのかどうかが最も重要な判断ポイントです。
※非現金支出費用とは、損益計算書では費用として計上されているが、実際に現預金での支払がない費用のこと。減価償却費や長期前払費用償却、貸倒引当金繰入額など。
どうしても返済が苦しくなった場合
利益を原資とした返済を目標に努力しても、想定した利益を出すことができなければ、毎月の返済によって資金が目減りしていきます。どうしても返済が苦しくなった場合、新たな融資を受けたり、既に借りている融資を仮換えたり、リスケジュールで返済を緩和したりと複数の解決手法があります。
絶対にしてはいけないことは、何も手続をすることなく、毎月の返済を延滞することです。「返済が苦しい」と銀行に伝えることは勇気のいることですが、返済を延滞することに比べると大きな問題ではありません。
本当に必要な借入なのか
銀行との融資取引を開始し、業績が順調に推移していけば、銀行から新たな融資提案を受けることがあります。「銀行との付き合いもあるから、、、」と提案されるがままに融資を受ける経営者が多いのですが、次第に融資の残高が増え、毎月の返済金額を利益では到底、返済できない水準となっています。
こうなると銀行は急に審査が厳しくなったり、本当に融資を受けたい時に受けられなくなったりします。「晴れの日に傘を貸し、雨の日に取り上げる」という言葉がありますが、あなたの会社を守るためには「銀行は身勝手だ」と他責思考では済ませられません。
最後に
この記事では中小企業が銀行融資を受ける際、重視することやメインバンク選びのポイントなどについて解説しました。特に融資取引歴が浅い時は、銀行との適切な距離感が難しく、「どこまで話せばいいのか?」、「こんなこと言ったら貸してもらえないのではないか?」など不安な気持ちになりがちです。
そのため、銀行から融資を受けるため、銀行の顔色を伺いながらの経営になってしまいます。余程、「財務内容や事業内容に自信がある。」、「銀行から借りなくても資金に問題が無い。」などでなければ、この不安な気持ちは、多くの経営者が通ってきた道です。
しかし、銀行のため、融資を受けるために経営者になったわけでは無いはずです。それが、資金繰りに追われだすと本来、経営者としてやりたいことが後回しになり、銀行から融資を受けることに時間を割くこととなってしまいます。そうならないためには、銀行との融資取引を始めた段階から、しっかりとメインバンクを選び、正しい融資の考え方が重要です。
無料で相談できる経営コンサルタントや公的な支援機関がありますので、助言を受けることをお勧めします。
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