銀行融資の審査に落ちる理由は多岐にわたりますが、原因を明確にし、適切な対策を講じることで再チャレンジの成功率を高めることが可能です。財務状況や事業計画、信用情報、担保・保証など、審査落ちの原因に合わせた改善策を講じることで、次の融資審査に向けた準備を万全に整えることができます。
この記事では、銀行融資審査に落ちる主な原因を4つのカテゴリに分けて詳しく解説し、それぞれに対応する具体的な改善策をご紹介します。また、融資審査において重要なポイントや、専門家のサポートを活用する方法についても取り上げます。この記事を読むことで、融資成功に向けた明確な道筋を描き、不安を解消するヒントを得られるはずです。
銀行融資でお困りの際には、ぜひ最後までお読みいただき、次の一歩に役立ててください。
目次
銀行融資の審査に落ちる主な原因4選
銀行融資審査では、さまざまな項目がチェックされ、それらの総合評価によって融資の可否が決定されます。
その中でも、審査に落ちる主な原因は、「財務状況の問題」「事業計画の問題」「信用情報の問題」「担保、保証の問題」大きく分けて以下の4つに集約されます。
まずは、これらの原因を知り、自分がどれに該当している可能性があるかを確認することが重要です。それが、次の対策を考える第一歩となります。
財務状況の問題
銀行員は企業の財務状況を複数のポイントから総合的に審査します。審査では、収益性や返済能力、自己資本の安定性などが評価されますが、これらのうち一つの基準だけで落ちるわけではなく、複数項目の総合評価が重要です。財務状況が銀行の基準を満たしていない場合、審査を通過するのは困難であり、当てはまる項目があれば、それが審査に落ちた理由の一つとなっている可能性があります。以下に、確認すべき主な審査項目を挙げます。
収益性が低い
企業の利益率が低い場合、返済能力が十分でないと見なされます。事業活動から得られる利益が安定していないと、銀行にとって融資リスクが高いと判断されます。
項目 | 計算式 | 目安値 | 補足 |
営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上高 × 100 (%) | 3~5%以下 | 利益率が低いと返済能力が疑われる |
赤字を計上している
赤字を計上している企業は、融資を受けても返済資金の確保が難しいと判断されることが多いです。特に、慢性的な赤字が続いている場合は、事業の持続可能性自体が疑われるため、審査を通過するのは一層厳しくなります。一方で、赤字が一時的な要因によるものであれば改善の余地がありますが、3期連続赤字のような場合には、銀行員による審査がより厳格になる傾向があります。
過剰債務である
借入金が事業規模や収益性に対して過大である場合、銀行から過剰債務と判断される可能性があります。これは、返済能力の不足を示す警告サインと見なされ、融資審査において大きなマイナス要因となります。過剰債務が続く状態では、さらなる借入は非常に厳しくなります。
項目 | 計算式 | 目安値 | 補足 |
借入金月商倍率 | 借入金 ÷ 月商 | 製造業:6倍以上 その他:4倍以上 | 借入金が過剰だと判断される |
売上高支払利息比率 | 支払利息 ÷ 売上高 × 100 (%) | 1.5%以上 | 支払利息の負担が過大だと危険 |
自己資本が過少である
自己資本が過少であると、財務基盤が脆弱だと見なされます。特に、負債の方が資産を上回る「債務超過」となった状態の企業では、新たな融資を受けることが非常に困難になります。
項目 | 計算式 | 目安値 | 補足 |
自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資本 × 100 (%) | 10%以下 | 財務基盤が脆弱でないことを示す |
事業計画の問題
銀行が融資を判断する際、事業計画は企業の未来を示す重要な指標となります。過去の決算書だけでなく、将来の計画が明確で実現可能であることが求められます。銀行は融資を通じて企業の成長を支援したいと考えていますが、事業計画に不備がある場合、審査を通過するのは難しくなります。特に、以下の点で問題があると融資の可能性は低くなります。
資金使途が不明確
資金使途とは、融資金をどのように使用するのかを明確にすることです。「設備投資」「運転資金」「新規事業の立ち上げ」など、具体的な用途が曖昧である場合、銀行は「融資金が適切に使われないのではないか」と懸念します。
返済財源が不明確
返済財源とは、融資をどのように返済するのかです。融資をどのように返済するかが示されていない場合、銀行は返済能力に疑問を抱きます。売上増加やコスト削減の具体的な施策を盛り込んだ返済計画を示す必要があります。
「数字の裏付け」の不足
銀行は、事業計画における収益やコストの見積もりに対して厳格な視点を持っています。計画の信頼性を支える具体的な数字の裏付けが不足していると、審査を通過するのは困難です。
- 売上予測の根拠が曖昧
たとえば、楽観的すぎる売上予測は、計画の信頼性を損ないます。具体的な市場調査データや、過去の実績を基にした売上予測が必要です。 - 経費見積もりが甘い
経費の過小見積もりは、収益が実際よりも多く見える結果を招きます。たとえば、「販促費」や「人件費」が十分に計上されていない場合、実現性に疑問を持たれます。 - 非現実的な収益計画
増収増益を前提としたバラ色の計画では、審査担当者の信頼を得ることはできません。現実的で具体的な計画を示す必要があります。
信用情報に問題がある
企業や代表者の信用情報は、銀行が融資リスクを評価する際に重要な審査項目です。過去の金融トラブルや税金滞納がある場合、信用力の低さから審査が厳しくなることがあります。
金融事故歴がある
過去に以下のような履歴がある場合、銀行は融資リスクが高いと判断します。
- 借入金の延滞
- 債務整理や自己破産の履歴
これらは、返済能力や財務管理能力に問題があると見なされ、審査の大きなマイナス要因となります。
税金や公共料金を滞納している
税金や公共料金を滞納している場合、財務管理が不十分であると判断されます。また、税務署や地方自治体の滞納記録は、信用情報機関に登録されるため、銀行にも共有されることがあります。これは、返済リスクを高める要因となります。
担保、保証人の問題
銀行は、融資リスクを軽減するために担保や保証を求めることが一般的です。しかし、担保や保証が不足している場合、審査を通過するのは非常に困難になります。
担保として差し入れる資産の不足
不動産、機械設備、売掛金など、銀行が担保価値を認める資産が不足している場合、融資審査は厳しくなります。特に、高額融資を希望する場合は、担保の有無が審査の重要な要素となります。
保証人の不足
保証人が求められる場合、適切な保証人が見つからないと審査で不利になります。また、個人保証が十分でない場合や信用保証協会の保証が利用できない場合も、審査のハードルが高くなります。
原因別の改善策
第1章で解説した融資審査に落ちる原因に対し、それぞれに適した改善策を実行することが重要です。
原因によっては、短期間で解決できるものもあれば、時間や専門家の支援が必要なものもあります。まずは、自社の現状を正確に把握し、改善に取り組むことが融資成功への第一歩です。
ここでは、財務状況の改善から事業計画の強化、信用情報の改善、担保の確保まで、それぞれの課題に対する具体的な対応策を詳しく解説します。
財務状況の改善をアピールする
財務状況に問題がある場合、経営改善を通じて「黒字化」や「収益力の向上」を目指すことが不可欠です。しかし、財務状況の本質的な改善には時間がかかることも現実です。そのため、資金調達を早期に行いたい場合には、現在の財務状況を正確に把握し、その要因を的確に分析した上で、銀行員に対して改善の見込みや具体的な改善策を示すことが非常に有効です。
特に、赤字を計上している場合は、なぜ赤字になっているのかを明確に説明することが重要です。また、赤字であっても資金繰り表を活用し、返済可能性があることを具体的なデータでアピールすることで、銀行の信頼を得られる可能性があります。
以下では、経営改善を次の3つのステップに分けて実行し、財務状況の改善を図る方法を解説します。
①固定費の削減
経費を削減は収益性の改善に非常に効果的で、無駄を排除することが黒字化への第一歩です。その際、特に衆目したいのが下記の「3K+Z」です。
- 交通費
精算ルールの見直しや移動手段の効率化。 - 交際費
不要不急の接待を削減し、費用対効果を考慮。 - 広告宣伝費
効果の低い広告媒体を廃止し、SNSやウェブ広告など低コスト高効果の手段を導入。 - 雑費
経費の細かい見直しを行い、無駄を排除。
②利益率の改善
商品やサービスの価格設定やコスト構造を見直し、利益率を向上させます。
- 価格の見直し
付加価値のある商品やサービスを提案し、値上げを実施。 - 仕入れコストの削減
仕入れ先と交渉し、原価を削減。 - 在庫管理の徹底
回転率を上げ、余剰在庫を減らすことで在庫コストを削減。
③売上高の向上
売上の拡大を目指し、新規顧客の獲得と既存顧客のリピート率向上に取り組みます。
- 固定客のリピート率向上
フォローアップ施策を導入。 - 新規顧客の獲得
ターゲットを明確にした広告やSNSマーケティングを実施。
事業計画を強化する
事業計画書は、銀行に対して企業の未来像を示す最も重要な資料の一つです。計画書が曖昧であったり、説得力に欠けていると、融資審査を通過するのは困難になります。銀行が納得できる事業計画書を作成するためには、資金使途や返済財源を明確にし、計画の実現可能性を高めることが必要です。さらに、視覚的にわかりやすい資料を作成することも非常に有効です。
資金使途を明確化する
銀行が融資を判断する際、融資金がどのように使用されるのかを詳細に記載することは必須です。たとえば、「設備投資に500万円、運転資金に200万円」と具体的な用途を金額とともに記載することで、融資金が有効に活用される計画であると銀行に認識させることができます。
特に、運転資金の場合は「季節資金」「増加運転資金」など、その内訳や背景まで説明することが非常に有効です。用途が明確であればあるほど、銀行は計画の信頼性を高く評価します。
返済財源の明確化
融資をどのように返済するかを具体的に示すことは、事業計画で特に重要なポイントです。営業利益やキャッシュフローを基に、毎月の返済額をどのように賄うかを詳細に記載することで、銀行に返済能力を証明できます。
たとえば、「毎月の利益から○万円を返済する」や「コスト削減で生じたキャッシュフローを返済に充てる」といった具体例を示すことで、計画の現実性を伝えられます。これらを資金繰り表や、損益計画書などを作成して提出することも非常に有効です。
計画の実現可能性を高める
銀行が事業計画を評価する際、計画の実現性は非常に重要なポイントとなります。
- 事業の差別化ポイントを強調する
自社の強みや独自性を具体的に説明します。たとえば、「業界初の技術を活用した商品」「地域密着型のサービス展開」「高い顧客満足度」などを挙げ、競争優位性をアピールします。 - 収益性の具体的な根拠を数値で示す
売上の根拠や収益予測を具体的に示します。過去の実績や市場データを基に、現実的な収益予測を記載することで、計画の信頼性を高めます。
抽象的な表現を避け、計画に具体的な数値を盛り込むことで、計画の現実性を示します。
信用情報の改善
信用情報に問題がある場合、それを改善することで銀行からの信頼を回復することができます。信用情報の改善は、主に延滞や滞納の解消、信用履歴の積み重ね、不正確な情報の修正を通じて行います。
延滞中の借入金や税金を完済する
信用情報に問題がある場合、延滞や滞納の解消を通じて銀行からの信頼を回復することが可能です。特に未払いの借入金や税金は信用情報に大きく影響するため、速やかな完済が最優先です。税金の滞納は金融機関にも共有されるため、早急な対応が必要となります。
すぐに完済が難しい場合は、税務署と分納の約束を取り付ける、または資金繰り表を用いて具体的な返済計画を提示することも有効です。これにより、解決への誠実な姿勢を示し、信頼回復につなげることができます。計画的に取り組むことで、信用情報の改善が進み、融資審査の通過が期待できます。
信用実績を積む
信用情報を改善するには、小規模の借入を計画的に返済し、良好な返済履歴を積み重ねることが有効です。これにより、金融機関の信用評価が徐々に向上します。また、取引先や他の金融機関との関係を良好に保つことも、信用力の向上に繋がります。
誤った情報の修正する
信用情報に誤記録がある場合、信用情報機関に修正を申請します。たとえば、すでに完済した借入金が延滞扱いとなっている場合や、不正確な情報が記載されている場合には、速やかに訂正を依頼します。
担保・保証の活用
担保や保証が不足している場合、銀行は融資リスクを懸念し、審査が厳しくなることがあります。この場合、担保価値を補完する取り組みが求められます。
担保価値のある資産を活用する
不動産、機械設備、売掛金など、担保として活用できる資産を精査します。例えば、所有している不動産を担保として提供することで、銀行に安心感を与えることができます。
保証協会を活用する
信用保証協会を利用することで、担保不足を補い、融資審査を通りやすくすることが可能です。この制度は特に中小企業向けに設計されており、銀行にとってはリスクを軽減し、企業にとっては資金調達のハードルを下げる重要な手段となっています。
ただし、保証協会の保証には上限枠が設定されており、この枠を一度使い切ってしまうと、新たな融資保証を受けられなくなります。そのため、将来的な資金調達の必要性を見据え、枠をどの程度残しておくべきかを慎重に検討することが重要です。安易に枠を使い切るのではなく、緊急時に備えた計画的な活用を心掛けることが必要です。
さらに、保証協会を利用して審査が落ちた場合でも、協会の担当者に直接説明を行うことが有効です。自社の財務状況や返済計画、事業計画を具体的に説明することで、協会側の理解を得ることができ、再審査の際によりスムーズに進む可能性が高まります。
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