経営方針書~社長の思いや考えを明文化する~
こんにちは。中小企業診断士の木戸です。
新型コロナウイルス感染症の影響がいつまで続くのか、先行きの見通しがたたない今だからこそ、自社の目標を定め、社内のベクトルをそろえて、一丸とならなければなりません。
しかし、経営方針書などを作成し、社内で公表、周知徹底している企業は多くありません。
平時から経営方針書の作成、試算表・資金繰り表による財務・収支状態の把握、会議体の見直し、社内のコミュニケーション促進などに取り組んでいる企業は今般の新型コロナウイルス感染症など有事の際にも迅速に借入申込や給付金申請ができ、速やかに本業の立て直しに移行することができます。
また、業績が低下して不安な思いをしている社員さんに対しても具体的な方針、対応策を示すことで、安心して働くことができます。
本日は、経営方針書作成の流れと作成後の取り組みについて、簡単にご説明いたします。
まず、社長が経営方針書の必要性を認識しなければなりません。経営コンサルタントや取引金融機関から言われて作成するものではありません。当社は、当社がやっていることをお見せするスタンスでご支援いたします。
①経営方針書の作成に至った社長の思いや経営理念を明文化する
きれいな文章にすることは難しいのですが、社長が大切にしていること、キーワードなどから考え、社長の頭の中にあることを明文化します。自分以外の誰かに伝えるためには明文化しなければなりません。
②事業概要を整理する
こちらも社長や役員、経営幹部の方々が感覚的に把握していることが多いのですが、売上割合、仕入割合、取引先、仕入先、外注先、組織図などを整理します。実際に整理してみると売上割合(取引先別や事業別など)が思っていたのとズレがあることもあります。
③環境分析、ポジショニング分析を行う
自社の強みや弱み、業界の機会や脅威の分析や、市場でのポジショニングの分析を行います。社長や役員だけでなく幹部、現場リーダー、事務スタッフなど多様な目線で環境分析を行うこともあります。
ここまでは現状の分析、把握です。ここからは、会社の将来について考えます。
④5年後、10年後どのような会社になっていたいかを考える
社長の経営理念をもとに自社のあるべき姿、将来の顧客と提供する商品・サービスなどを考えます。自社のあるべき姿が定まれば、未来から逆算して達成ルートや達成方法を考えます。これをビジョンアプローチと呼びます。
⑤3~5年の財務目標を立てる
損益計画だけでは資金の流れがわからないため、財産計画やキャッシュフロー計画も立てます。財務目標は売上拡大にこだわり過ぎず、利益やキャッシュフロー、付加価値、給与支給額などを重視します。
⑥目標を達成するための今期の方針、具体的な取組みを検討する
営業戦略、組織体制、人材採用・育成、資金調達、経営管理体制(会議体、経営幹部)、IT化推進などあるべき姿や財務目標を達成するための今期の方針、具体的な取組みを検討します。社長や役員が責任者となるのではなく、内容によっては現場リーダーや担当者を責任者とし、管理させることは社員教育にもなります。
⑦経営方針書のキックオフミーティング
経営方針書は作成するだけでは何の意味も持ちません。社内で公表し、周知徹底することでその意味が高まります。公表の場として貸会議室やホテルなどでキックオフミーティングを開催することをお勧めしています。キックオフミーティングには、社員だけでなく、ご家族やビジネスパートナーなども参加されるケースもあります。(当社もオブザーバーとして参加いたします)
⑧計画の実行と見直し、来期の計画策定
キックオフミーティングで周知した取り組みを実行し、適時見直しを加えます。毎月のご訪問時に計画のモニタリング、予実管理、軌道修正を行い、決算が近づけば来期の計画を作成します。初年度から完璧な方針書作成はできないので、何年もかけてブラッシュアップします。
今般の新型コロナの影響で目下の資金繰り、売上確保などに対応していると、会社の将来を考える時間や余力を持つことは難しいかもしれません。
しかし、何かを始めるのに遅すぎることはありませんので、今期からでも経営方針書の作成を検討されてみてはいかがでしょうか。