平成27年8月、日本全国の社長インタビューサイト「ニッポンの社長」にて取材していただいた内容をそのまま記載しております。

※法人化以前のため、「株式会社フラッグシップ経営」ではなく「長尾経営事務所」と記載されています。

編集前記


経営コンサルタントは全国に数多く存在しているものの、的確な目利きで選ぶことが難しい存在である。その中で全国から経営改善支援の依頼を受けているのが長尾経営事務所だ。その支援実績は金融機関から“西日本の中小企業診断士としては屈指”と評されるほど。中小企業庁・経済産業省からは中小企業診断士としては数少ない経営革新等支援機関にも認定される。専門知識やアカデミックな理論を駆使する一方で、現場を巻き込みながら事業を再生させる。代表・長尾康行氏に事業再生を成功させる方法やコンサルタントとしての思想などを聞いた。

 

 

御社の事業内容を教えて下さい。

弊社は、中堅企業を含む中小企業や零細企業に対して、財務、資金繰りの改善を主とする経営改善、事業再生の支援をいたしております。現在、全国からお問い合わせやご依頼を頂いており、年間で70億円から100億円程度の資金調達や返済条件の変更を達成しています。交渉する金融機関の数は、年間で30~40行になります。近畿圏のメガバンクや信用金庫をはじめ全国各地の金融機関とコンタクトを取れるほどの案件数を手掛けています。

 

数ある経営コンサルタント事務所の中で、御社が選ばれる理由は何でしょうか。

経営コンサルタントという職業は、自分で名乗れば誰でもできるという特性があります。その中で意識して取り組んでいることは、まず、私自身の“人となり”を明確に伝えることです。ホームページや毎月発行するニュースレター、名刺などを使って、等身大の自分を表現しています。それらによって「話し易そう」という一定の信頼感を得ているという感覚はあります。  また、明確な特長と言えるのは、私自身、国が認める唯一の経営コンサルティングの資格である中小企業診断士であり、MBAホルダー(経営学修士)であるということです。高度な専門知識やアカデミックな理論を活かしつつ、現場の実務に根差した支援を行っていることは弊社の特長の1つです。  さらに、弊社は中小企業庁・経済産業省に認定された経営革新等支援機関です。中小企業診断士が経営革新等支援機関に認定されるには一定の要件を満たす必要があります。そのため、全国約2万3千人の中小企業診断士のうち認定されているのは395人のみです(2015年4月現在)。

 

経営革新等支援機関に認定されていると競争力には繋がりますか。

対外的な信頼性を底上げする要因の1つではあります。また、現在、行政が様々な助成金、補助金を打ち出しており、その多くが経営革新等支援機関の支援を受けて申請することを条件としています。それによって経営革新等支援機関の間ではちょっとしたバブル状態が生まれている状況です。  ただ、私自身は助成金や補助金を取得するための支援は積極的には行いません。それは流行に乗って稼いだ利益は「浮利」であり本質的な利益ではないという私自身のポリシーによります。一過性の売上や利益を追いかけると、それがなくなった時のダメージが甚大です。また、社の既存のお客様の大多数が事業再生に取り組んでいる状況であるにも関わらず、一方で浮利を追うというのは職業倫理上の問題があるのではないかとも考えています。

 

経営コンサルタントを志した理由をお話し下さい。

私が生まれ育った家庭は複雑で様々な問題を抱えていました。しかし、家族全員、力を合わせて明るく生きてきました。振り返ると、どんなに苦しくても、困難をプラスに捉え、家族で力を合わせて乗り切ってきたという経験が、経営コンサルタントという職業への適性を育んだと感じます。  経営コンサルタントは大きなやりがいがある職業です。赤字の会社が黒字になった瞬間は、声に出して喜びます。また、経営者の方が大変な状況を乗り越えて賞与や社員旅行の話をしている様子を見ると何とも言えない気持ちになります。その社員旅行には、当然のように私の名前が組み込まれていることも少なくありません。納涼会や忘年会の際も席を用意していただいております。そのような時には仲間として認められている実感が持てます。

 

起業の経緯を教えて下さい。

私は大学卒業後、2社の経営コンサルタント会社でキャリアを積みました。20代前半から起業することは決めておりましたが、同時に現場経験も積むことも必要だと感じていました。2社目の事務所はある通信会社の一部門としてコンサルティング事業を行っており、私はここで最低5年間は勤務するつもりでしたが、転職して約1年が経った頃、経営コンサルティング部門がある事情から解散することになり、やむを得ず予定より早く独立することになりました。ただこの1年間で身に着けた「浮利を追わない」「正道を歩む」といった経営哲学は、現在に生きています。

 

中小企業の経営者に共通する悩みは何ですか。

経営が順調な会社を含め、殆どの経営者が悩んでいるのは、人材とお金の問題です。特に中小企業にとって人材育成は永遠の課題といっても過言ではないでしょう。一般的に良い大学、良い(優秀な)学生は大企業志向が強いので、中小企業には元々良い人材が入ってきにくいのは認めざるを得ません。だからこそ、入社後にしっかりと人材を育成することが何より重要なのです。売上や利益というのはすべて人材が生み出しているものです。数字を追いかける、業績を上げるということはイコール人材育成を行う事なのです。ここを理解していない、あるいは理解はしているが行動に移せていない中小企業が残念ながら多いです。  人材育成と業績を分けて考えると経営は上手くいきません。100%と断言しても良いですよ(笑)

 

実際の現場では、どのような支援をされるのですか。

支援の仕方は企業様によって様々ですが、悲壮感を持って相談に来られる経営者には、まずは気持ちを持ち直していただきます。私は「所詮はお金の問題」と思うのです。普通に会社を経営していて命まで取られることはまずありません。「ごめんなさい」で済むレベルだと思っています。私がそのように話すと、相談者の表情が和らぎます。中には涙を流すぐらい安堵される方もいらっしゃいます。  実際の支援では、殆どの案件が財務・資金繰りの改善から始まります。具体的に申しますと資金の流出を止めることです。固定費の削減、金融機関への返済条件の変更などをスピーディーに行います。売上は現状維持もしくは減少しても構わないので、まずは徹底的な無駄な経費の削減と不採算事業などの撤退を判断します。事業再生支援ではこれらを省いていきなり売上アップを提唱することはありません。なぜなら今までのやり方が悪かったために会社が傾いているわけですから、その原因を除去し筋肉質な企業に変わらなくてはならないからです。やり方や中身が悪いまま売上の拡大を求めると余計に被害が拡大します。筋肉質にしたうえで売上アップや人事制度など会社の仕組みを整えていきます。  この時に最も大事なことは、経営者以外の幹部や管理職をいかに巻き込むかです。そのために私たちはファシリテーターとしての役割を果たすことを心掛けています。ファシリテーターというのは、議論を円滑に進める司会者のようなものです。支援をする際には、予め、3か年または5か年の計画を立てます。この時に、我々と経営者で計画を作れば、素早く精緻なものができるのですが、それをただ現場に落とすだけではその計画は必ずといって言いほど実現されません。ですので弊社では幹部や現場を巻き込んで計画を作ることに注力しています。計画作成のプロセスから参加することが人材育成にもつながりますし、何より意識が変わり、スピーディーに成果が出ます。

 

過去の支援事例をご紹介下さい。

リーマンショック、超円高、新規事業の失敗などが重なり多額の損失を抱えた企業がありました。銀行からも融資を断られ、弁護士からは倒産か民事再生しかないと言われ、弊社に相談に来られました。内容を検証してみると確かに非常に深刻な状態でした。病気に例えるなら、葬式の準備が必要かと思われるほどです。  しかし、話を聞けば経営者の再建したいという強い想いが伝わってきました。そこで私は、寝食を忘れ計画書を作成し、20行を超える銀行に説明して回り、返済を見直しする合意を何とか取りつけました。今では、しっかりと利益を出すまでに経営状態は改善されました。金融機関や弁護士たちは奇跡に近いと言うほど珍しい案件です。弊社にはこのように誰にも相談できない案件やかすかな希望をもって訪ねてこられる方もたくさんいらっしゃいます。

 

今後のビジョンをお話し下さい。

私は、中小企業診断士事務所として日本で一番の存在を目指しています。私自身、親が苦労して私を育ててくれたので、誰かが苦労している姿は見たくないという気持ちを人一倍強く持っています。人の痛みがわかる人でなければ、この職業についてはいけないと私は考えます。今はまだ、何をもって日本一と言うかは明確ではありませんし、売上規模の拡大も必要だとは思いますが、それよりも素晴らしい価値観を備えていると皆様から言われる事務所になりたいと思っています。そこで日本一になりたいですね。私にはその資格も能力もあると自負しています。そして、中小企業診断士といえば長尾経営事務所と言われるようになりたいですね。  ただし、日本一になるというビジョンを実現するには一人では不可能です。同じ価値観を共有する仲間のサポートや周り人々の手助けを得ながら実現していければと考えています。そうすることが中小企業診断士の認知度や社会的な地位を高めていくことにもなると考えています。